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あたしと風邪と彼と。 明けない夜を願って-LAI 2005年10月30日[22:23]
10月。
制服も衣替えになり秋を実感し始めた頃、少しずつ風も冷たくなってきたのにあたしは油断してたらしい。「体力だけは自信がある」と過信しすぎていたのか、朝から何だか身体がだるいのに気が付いていなかった。
だって、貴重な収入源であるバイトを休むわけにはいかないし。
仕事の都合で、パパとママからの収入は期待できない。


「・・・つくし、何か顔、赤くない?」

「そう?気のせいじゃない?」


放課後、バイト先の和菓子屋で優紀とたわいのない話をしながら接客していると、いつもと違ってミスの多いあたしを変に思ったのか、優紀はあたしの顔を覗き込んできた。
優紀の手がさっとあたしの額に伸びると、あたしは振り払う余裕もなく熱を感じ取られて、強制送還されることになってしまった。


「・・・全くもう、自分で気付かなかったの?あとは私がやっておくから、家でゆっくり休んでなよ」


「ごめん」とあたしは言うと、よろよろと立ち上がった。
こんな時の優紀には逆らわないほうがいい。
あたしは事務室に置いてある自分の荷物を「よいしょ」と肩にかけると、優紀がニヤニヤしながら言った。


「・・・あ、そうそう、つくしが着替えてる間に偶然道明寺さんが来てね、
つくしのこと、家まで送ってもらうようにお願いしておいたから」

「・・・なっ!」


文句を言いかけたあたしの口を優紀が慌てて塞ぐ。

「いいから!たまには彼氏に甘えなよ。・・・素直になってよ、つくし」

「・・・」

「さ、道明寺さん、待ってるよ。」


ポン、とあたしの背中を押して優紀は笑った。







外に出ると「いつまで待たせるんだ、てめぇ」オーラを放った道明寺が腕を組んで仁王立ちしていた。
あたしは熱があるのと何となく照れくさいやらで、赤い顔で彼を見た。
だんだん赤くなっていく熱のせいで、少し瞳がうるんでいたのかもしれない。
そんなあたしを見て彼は何を思ったのか、さっきまで青筋立てていたのはどこへやら、ふっと溜息を吐いて「行くぞ」とあたしの腕を取ると、表で待たせていたベンツに詰め込まれた。





走り出した車の中で、しばらく続く沈黙。先に破ったのは道明寺だった。


「・・・本当にバカだな、お前は」

「何よ、いきなり」


熱があるのに、これ以上しんどくさせないでよね、とあたしは釘を刺す。


「辛いならすぐ俺を呼べばいいのに」

「・・・風邪ごときで、あんたを呼ぶわけにはいかないでしょ?お互いの生活があるんだから」

「・・・好きな女が苦しいときに、助けてやりたいって思うのはだめなのかよ?」

「・・・」


ある意味純粋に育ちすぎた彼の口説き文句に、あたしは嬉しい半面、少しだけ腹立たしさを感じた。
いつも自分の気持ちに素直でいられたら、どんなにいいか。
彼の好意にどっぷりつかってしまうことができたなら。
でも、それはあたしのプライドが許してくれない。


あ、やばい。

「・・・道明寺・・・」

少しずつ熱が高くなっていくのがわかる。
ぼーっとしていく頭の中で、これだけは、と道明寺に言った。


「・・・バカ・・・」


ぼやけていく視界の中で、彼が怒っている顔が歪んで見えた気がした。





***




目覚めると、豪華なシャンデリアが目に映った。


「・・・お目覚めになりましたか?お熱が高くて心配していたんですが、風邪ですって。もう大丈夫ですよ。お医者様もそう言ってましたし。ぼっちゃんも心配されて・・・」


お手伝いさんがあたしの顔を見てにっこり微笑む。
・・・ということは、あたしはあのまま道明寺の家に運び込まれたということに・・・。
あたしは「またやっちゃった・・・」と血の気が引いて、恐る恐るお手伝いさんに聞く。


「・・・すみません。本当にありがとうございます。
・・・司さんは?」

「ぼっちゃんなら多分、もうすぐ・・・」


近づいてくる足音がドアの前で立ち止まったかと思うと、バンと勢い良くドアが開いた。
身体を起こしたあたしの顔を見て、道明寺はほっと溜息を吐く。
お手伝いさんは「ご用事があれば何なりとお呼びくださいね」と言うと、そそくさと入れ替わりに部屋を出て行った。


「体」

「へ?」

「もう、大丈夫かよ?」

「・・・あ、うん。おかげさまで。ごめん。いろいろありがとね」

「医者が言ってた。過労もあるって。最近、頑張りすぎてたんじゃねーの?」


ベットの端に座ってあたしを見つめる眼差しは、心配そのものだった。
真っ直ぐ見据えられて、あたしは思わず視線を逸らす。
抱え込んだ膝に視線を落とした。


「普通にしてたつもりだったのにな・・・言われてみれば、学校のテストもあったし、バイトも増やしたからちょっと忙しかったかもしれないけど」


道明寺が呆れた顔であたしを見た。


「ま、お前らしいけど。・・・丸一日熱でうなされてたんだぞ」

「げ、そんなに?今何時?どうしよう、バイト・・・」

「今は夜の8時。そう言うと思って、お前の友達に都合つけてもらうように連絡しておいた。
どうせ病み上がりじゃ、すぐには無理だろ?うちでゆっくり休んでいけよ」


「・・・ありがと・・・」


あたしは道明寺の根回しの良さにすっかり感心しながら、ふとあることが気になって聞いてみた。


「・・・ねぇ、あたしが寝ていた間、変なこと口走ってなかった?」

「・・・ああ。そういえば言ってたなぁ。」


そう言って、彼は意味ありげにニヤリと笑った。


「『バカ』とか・・・」


げっ!


「俺がベッドから離れようとしたら、『何でそばにいてくれないの?』とか・・・」


げげっ!


「『寂しいから添い寝してよ』とか・・・」


げげげっ!


「・・・最初のはわかるけど、あとの二つはあんたの創作でしょっ?絶対あたし言ってない!」

「・・・いや~、俺って愛されてるんだなぁ。」


「嘘だ」と抗議する人の言葉を無視して、ハハハと楽しそうに笑う彼にあたしは枕を投げつける。


「ほらほら、病み上がりが。また熱出るぞ」

「誰のせいよっ!」


「もう知らない!」とあたしは、彼の視線を遮るように反対側を向いてシーツに深く潜り込んだ。
寝言を言っていない自信がないだけに、彼の言うことだ。ひょっとしたら、あたしは本当に心の底の願望を口走ってしまったのかもしれない。
お互い忙しくて、なかなか会えなかったから・・・


助けてもらったのに、あたしはいつも意地っ張りというか・・・
多分、彼は呆れてあたしを見ていることだろう。



足元の方に座っているはずの彼の気配がふと消えた気がして「あれ」と思うと、シーツの上から大きな手で頭が撫でられるのを感じた。
すぐ隣に彼がいる。
シーツを取り去って振り向けば、今あたしが欲しいものはきっと手に入るのに、「かわいくないあたし」は背中を向けたまま、それができなかった。


やがて、そろそろとシーツが引っ張られて。

「牧野」

道明寺があたしを呼ぶ。
あたしはどういう顔をしたらいいんだろう、と思いながら彼の方を向いた。


困ったような嬉しいようなあたしの複雑な表情に、道明寺は「すげー顔」とプッと笑う。

「何よ・・・」

いつものように言い返そうとしたあたしの言葉は、近づいてきた彼の唇にあっという間に飲み込まれてしまった。
・・・彼は一番ずるいやり方で、いつもあたしの全てを支配するのだ。そしてあたしは心の底で、それを与えられることを本当は待っているのかもしれない。


あたしの中の「女」の部分が彼を欲して、鳴いた。
明け方まで、あたし達はお互いのぬくもりを求め合う。

夜明けが来ないことを心の底から願ったのは、生まれて初めてかもしれなかった。



「・・・風邪、うつるかもよ」

「・・・人にうつすと、早く良くなるんだろ?」

「・・・見舞いには来ないよ?」

「・・・お前ね・・・」





案の定、風邪をうつされた彼があたしを振り回すことになるのは、また別のお話。








***


遅くなって申し訳ないですm(__)m
やっとつかつく話完成。お待たせしました!

最後の一行の前でちょっとだけ反転してもらえたら、セリフがちょこっとあります・・・。
テーマに微妙に沿っているような、いないような・・・(困)

コメントは、後ほどお返事させていただきます~。
感想等いただけたら幸いです。

*最後、ちょっと変更しました。結構際どいかな・・・。
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◇この記事へのコメント◇

LAIさんのつかつく拝読しました^^
反転して ̄m ̄ ふふ、と笑みがこぼれつつw
お仕事お忙しい中、素敵なつかつくをありがとうございました♪
2005/10/30(日) 23:57:07 | URL | 京 類架 #-[ 編集]
「待ってました~」のタイトルのあとの「(笑)」に笑ってしまったLAIです。本当にご心配かけてすみません・・・!今週はなかなかスケジュールが思うようにいかなくて大変でした(これは来週にも続きそうで怖いのですが)。
類架さんの次回作も楽しみにしています!
2005/10/31(月) 00:23:16 | URL | LAI #C6R2gQ3k[ 編集]
LAIさん、はじめまして。こんばんは。
とっても素敵なつかつく、ご馳走様でした。
なんだか二人らしいお話に頬がゆるみっぱなしで読みました♪
特に最後のセリフには爆笑!
なんてつくしらしいんだ!と思ってしまいました(笑)
司が大好きなんだけど素直になれないつくしちゃんを、思う存分堪能させていただきました。
ありがとうございました(^-^)
2005/10/31(月) 20:42:50 | URL | まいちゃ #tolGtSMw[ 編集]
こんばんは。
最近、仕事が忙しく、ささくれがちな私の心を癒してくださって、ありがとうございます♪
司&つくしの相変わらずなところが可愛くて・・・(^^)
素直じゃなくても、気持ちは十分司に伝わっているんですよね。
可愛いお話をありがとうございました。
2005/10/31(月) 21:40:00 | URL | mika #-[ 編集]
LAIさんのサイトにはお邪魔してたのに気付かなくて…orz
やっと辿り着けましたっっ
やっぱり好きです、LAIさんの司つく…
らしくって無理が無くて、とてもいいですっっ
「・・・いや~、俺って愛されてるんだなぁ。」
司のセリフがめちゃリアル(笑)ぜったいヤツならこういうに違いないと大爆笑。
そのときのつくしの表情まで想像できて楽しかったです。
類架さんの類つくもメッセ出遅れてしまったのですが…とても素敵///
また遊びに来ますっっ
2005/11/01(火) 00:23:10 | URL | ゆっこ #dXiLrgjE[ 編集]
いつもゆっこ様サイト、お邪魔させていただいてますw
ゆっこ様もコラボされててお忙しい中、おいで下さいましてありがとうございますっ!
LAIさんのつかつくだけでなく、私の類つくまでお読み下さったのですかーw(>▽<)きゃー♪ありがとうございます^^
是非またお立ち寄り下さいませ^^お待ちいたしておりますっw
2005/11/01(火) 09:20:18 | URL | 京 類架 #-[ 編集]
みなさん、コメントありがとうございます!
特に、類架さん、いつもありがとうございます!ネット環境が少し変わりまして・・・。仕事との兼ね合いで、ゆっくりできなくなってきています。遅れて本当にごめんなさいm(__)mどうか見捨てないでやって下さい。

>まいちゃ様
テーマがテーマだけに、私の書くつかつくはやはりこうなってしまいます・・・。砂を吐いていただけたでしょうか(笑)
コメントありがとうございました!

>mika様
お仕事お忙しいですね。私もです(涙)。お互いがんばりましょう!
ということで、お忙しい中、コメントありがとうございます。
素直じゃないけど、心のどこかでつながっているカップル、理想です・・・。
コメントありがとうございました!

>ゆっこ様
いつもお世話になっています。P-BBSへのイラスト投稿、しかと確認させていただきました!素敵なつかつく、ありがとうございます。お返事は後ほど・・・。これは私も描きに行かなくては・・・!
司はジャンボリーな性格でなくてはいけないですよね。これ、花男の中での「司の基本ルール」だと私は認識しているのですが・・・(笑)
コメントありがとうございました!

>類架さん
本当にいつもありがとうございます・・・!本来なら私がやらなくちゃならないコメント返しまで・・・。またご迷惑をおかけするかとは思いますが(コラ)、よろしくお願いしますm(__)m


仕事の方ですが、もうちょっと収集がつかないので、次回作までもう少しお時間いただけたらなんて思います。申し訳ありませんが、もう少しお待ちくださいm(__)m

2005/11/18(金) 03:06:58 | URL | LAI #C6R2gQ3k[ 編集]
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