上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサーサイト スポンサー広告
夢の国で会いましょう。【2】 明けない夜を願って-LAI 2006年02月27日[02:36]
「夢の国」の中でも、やっぱり道明寺は道明寺だった。


あたしと同じようなビラビラの服を着た女性達の視線と黄色い声を一斉に受けていても、相変わらず自分に関心のないことには無愛想だった。そして…えーと、あの格好は何て言えばいいんだろう?
…とりあえずあたしが知っている道明寺と同じで、「夢の国」の彼もその身なりはどこから見てもお金持ちにしか見えなかった。…悔しいけど、やっぱりかっこいい。


って、あたしはあいつに見惚れてる場合じゃないか。
現実の世界のあいつは今頃何しているんだろう、とあたしの胸はチクンと痛む。
思い切って話し掛けようかと思ったけれど、多分ここは現実とは違うはずだ。厄介なことに巻き込まれるのはやめておこうと思い、あたしは道明寺の視界にできるだけ入らないように、遠回りしながら通り過ぎたそのとき、



「ツクシ!」


びっくりして声のする方を振り向くと、そこにはいかにも街娘の格好をした優紀がいた。


「おばさんのお使い?」


そう言ってにっこり笑う「夢の国」のユウキ(現実の世界と分けるために、一応カタカナで)は、やっぱりあたしの知っている親友そのものだった。ホッとしたのか、あたしの涙腺がじわじわと緩み出した。


「ツ、ツクシ?どうしたの?何かあったの?」


驚いて心配そうにあたしの顔を見つめるユウキ。その眼差しは本気であたしのことを心配している。彼女ならあたしのことを話せるかも…、とあたしは決意して口を開いた。


「…何でもないよ。…ね、大切な話があるんけど…今から話す話、笑わないで聞いてくれる?」


同じ名前の「もう一人のあたし」が確かに存在しているのに、なぜか「夢の国」にいる「現実のあたし」。もう一人のツクシはどこに行ってしまったのだろう。そしてなぜあたしはここにいるんだろう?



二人で歩きながら話し始めたそのとき、あたし達の前に突然立ちはだかったのは、不機嫌な表情であたしを見つめる道明寺だった。








◆後書き・・

スポンサーサイト
「国境のトンネルを抜けると雪国だった」


頭の中はぼんやりしていてよくわかっていなかったけれど、
とりあえず、目が覚め始めたあたしの頭の中に浮かんだのは、そんな書き出しで始まる小説だった。
そう言えば昔、学校の授業で読んだことあったっけ。


でも、今のあたしの状況はこうだ。


「長い眠りから覚めると、違う世界だった」


見慣れた木目の天井じゃなくて、灰色に薄汚れていて。
まだけだるい体をゆっくり起こして周りを見ると、小さい頃に見た外国を舞台にしたアニメのような、見るからに「苦労してます」を絵に描いたようなぼろぼろの家具が置いてある。
昨日まで確かに現代風のデザインだったドアは、木目がはっきり見て取れ、ペンキが剥げかけていた。


「……」


あたしは自分が見ているものが信じられなくて、キョロキョロと周りを見ていると、勢いよくドアが開いた。


「もう、ツクシ!いつまで寝てるの?今日は町に買い物に行ってくれるって言ったでしょ。ススムはお父さんと一緒にもう出かけたわよ」


ぐずぐずしないで!とまくし立てるママは、いや、ママそっくりな人は、いつも来ているジーンズとトレーナーという服装と明らかに違う。
というか、映画とかで見た貧しいヨーロッパの人みたいな服装だ。


「…ね、ねぇ、ママ。ここ、どこ?」

「…あんた、寝ぼけてんの?どこって、うちの家でしょ?
…さあ、ばかなこと言ってないで、さっさとお使い行ってきてちょうだい!お父さんが次の仕事を見つけるまで、うちはがんばらなきゃいけないんだから。」


はぁ、と溜息を吐きながらもエプロンを握り締めながらすごい勢いでまくし立てるママは、確かにあたしの知ってるママだ。
聞きたいことは山ほどあったけれど、「あの…」と言いかけるあたしをママは無理矢理ベッドから追い出し、「早く顔洗って着替えてらっしゃい!」と追い立てるように服を投げた。





*************






レースのいっぱいついた服しか着るものがなくて、映画とか歴史の教科書で見たよく似た服を着ていた女性達を思い出しながら、何とか服は着ることができた。
慣れないコルセットを前に途方に暮れていたら、ママが「何やってんの?貸しなさい!」とあたしの手からコルセットを奪い取り、ぎゅーっと気絶するかと思うほど締め付けてくれた。あんまり苦しかったので、あたしは椿お姉さんの抱擁を思い出してしまった。




それにしても……時代が違ってもやっぱりうちは貧乏なのね。
と、あたしは外に出て「マキノ家」らしい家を見た。色あせた瓦で守られている屋根は、ところどころに修理の跡があった。壁は家の中と一緒でやっぱり薄汚かった。外にはママが干したパパとススムの服らしいものが風に揺られている。


「…本当にここ、どこなんだろう?」


あたしはとりあえずママから言われたお使いを済まそうと、家から歩いて20分先にあるらしい町に向かって歩き出した。ひょっとしたら手がかりが何か掴めるかもしれないし。

きつく締められたコルセットのせいで、ちょっと胸が苦しいのを我慢しながら
わずかに持たされたお金とバスケットを持って、街に入ること数歩。




あたしはそこで、多分あたしの夢の中、…名づけるとしたら「夢の国」での姿をした「道明寺」に会ってしまった。







****************




◆後書き・・


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。