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レインボーな夜 色々な夜-類架 2005年12月23日[23:47]
【レインボーな夜】

ある夏の雨上がり。
通り雨が過ぎると真っ青な空が深く空を彩る。
埃っぽい雨の匂いを大きく吸い込み、空を仰ぐとくっきりとした虹。
その向こうにもうひとつ。

2本の虹を見つけたつくしは、類の腕を力いっぱいひっぱり真っ直ぐ伸ばした腕の先にあるそれを
瞳輝かせて飛び跳ねるように大騒ぎして訴える。

 「ほら!見てみて!!虹が出てる!しかも2つもっっ!花沢類っほらっ!!」
綺麗だと、すごいだと歓声を上げながら、道行く人目も気にせずはしゃぐつくし。
そんな彼女に目を細め、類は答える。

 「めずらしいね、虹が2つって。」

 「でしょ?!ね!あたしも何年ぶりだろ・・・。そう、そうそう!確か小学校の時に一回見たんだよね~。」
その時ね?と当時のことを話し出すつくし。
類はくすりと笑い、つくしの話を聞きながら昔を思い出す。


 小さい頃、俺自身他人のことには興味なかった。
 だけど、自然や動物には抵抗がなかった。
 静に連れ出されて行った林の奥にある小さな小屋で、俺も一度通り雨が過ぎるのを待っていた。
 司たちは雨が上がると濡れた服を着替えてくると、水溜りに怒鳴りながら帰って行った。
 けど、俺は全然気にもならなくて。
 静たちが帰っていくのを見送りながら見上げた空に、2本の虹があったのを覚えてる。

 それが無性に綺麗に思えて、手を伸ばした。
 届くはずがないと・・・望んではいけないんだと、力なく諦めた・・・。



 「ほんと、バカだよね!自転車で虹を追いかけるなんて!虹が掴めるわけないのに。
 しばらくして虹が消えちゃって、おお泣きして・・・あ、でもどうやって帰ってきたんだろう。
 何とか帰ってきたんだよね、今ココにこうして無事で居るわけだし?不思議・・・。
 あー、虹に乗ってみたいなぁ・・・って、そんな驚くことないじゃない。」

だって、同じこと考えてたなんて。
 「くすっ。可愛かったんだろうな、泣いてる牧野。」
一瞬のうちに微笑を見せた類に安心したのか、またつくしは話し始めた。

 「でもね、一度で良いから虹を捕まえてみたいなぁってあの頃本気で思ってたの。
 今はちゃんと無理だって解かるんだけどね。」
子どもだったってことだよね、と苦笑いをするつくし。


類は消えていく虹を仰ぎながらふっと口元を緩めた。





突然思い出したのは、もしかしたらこのイルミネーションのせいかもしれない。
10年目。
あげたいものはまだまだ沢山ある。
だけど。
今年は・・・。

類は胸に秘めた願いを強く思った。






12月24日の夜。
類とつくしはメープルホテルの前で待ち合わせの約束をした。
ホテルのロビーには天井まで届くであろうクリスマスツリーが飾られている。
その横にはガラス張りのエレベーターが2基あり、早めに着いたつくしはツリーの下で類を待った。
夜10時になる頃、類がスーツ姿でやってきた。
カウンターで一言二言交わし、つくしの方へと近づいてくる。

 「まった?」
 「ううん、全然。」
短く言葉を交わし、類はつくしの横に立つと左肘を差し出す。
つくしはするりと手を添えると、エレベーターへと歩き出した。
類は最上階のボタンを押す。

最上階のランプが点滅し、ドアが開く。
敷き詰められた真っ赤な絨毯へと踏み出し、廊下のほうへと歩き出すと、
つくしはぴたりと足を止めた。

 「くすっ。どう?ビックリした?」
少しカーブになっているこのメープルホテルの建物の廊下は、同じように大きな曲線を描いている。
その廊下に、7色の絹の絨毯が敷き詰められていた。

 「何か、虹みたい・・・。」
光の反射だろう、遠くの方は少しダークに見えるが柔らかな光沢がある。
 「前に虹の上、歩いてみたいって言ってたでしょ?」
つくしは目をまるめ、覚えてたんだ、と驚きを隠しきれなかった。

 「ありがと、花沢類。」

一つ一つに歓声を上げるつくしを横目に笑いを堪えながら、類は部屋へと案内する。
ドアを開け中へと促す類に、つくしは会釈して進み出た。


 「ぅわぁぁぁーっ!!綺麗~!!」
メープルホテルの中でも一番のスウィートルーム。
初めて司に話した時、司は眉をぴくりと上げながら「最高の部屋を用意してやるからな。」と笑った。
類自身、ここまでとは思いもしなかった。

何もしなくても高級感のある最高級の部屋である。
それが、更にパワーアップし大統領でも泊まるのかと思うほど、沢山の花とロウソクが飾られている。
そして大きなクリスマスツリーの下には、沢山のプレゼントが積まれていた。

 「これ・・・。」
つくしは呆然と辺りを見回し、プレゼントの山を見つけると振り返り言った。

 「ん。それ全部牧野に。」

 「こ、こんなに?!」
驚きすぎて声が裏返ってしまった。
 「くくく。そんなに驚くことないでしょ?これでも厳選したんだけど?」
これで?!とまたもやつくしの声は裏返る。
 「こんなに貰えない・・・。」

 「そ?じゃあ一つ選んで。後はまた今度にするから。」
そう言うと、類はソファーに座りつくしの行動を見つめていた。
いや、そういう問題じゃないでしょ・・・とため息混じりに、つくしは一番上にある小さな箱に手を伸ばした。

ツリーの下に座り込み、しゅるっとリボンを解き、包装紙を綺麗にはがしていく。
手のひらサイズの箱の蓋を開けると、つくしの動きが止まった。




たった一言が書かれたカードが一枚入っていただけだった。

”愛してる”

つくしはそのカードに書かれた文字を指先でそっとなぞる。

つくしは大きく息を吸い込むと、次の箱を開け始めた。

”愛してる”

次の箱も、その次も、同じようにカードが入っているだけ。
つくしは次々に開けていく。

 あたしも・・・あたしも愛してる。

カードが一枚出てくるたびに、つくしは心の中で何度も想った。

全ての箱を開け終わる頃、つくしは押さえ切れなくなって類の元へと走り寄り類の胸に飛び込んだ。
何度も名前を呼び、強く抱き締めるつくしを類は受け止める。
 「あたしも、愛してるよ。。。ありがと、沢山・・・沢山ありがとう。花沢類。」


類はつくしを包み込み、泣き出してしまったつくしの頭をそっと撫でる。

 「つくし。」

涙目で見上げると、類はポケットから小さな箱を差し出した。
つくしは両手でそれを受け取ると、類の隣に座りなおし包みを開ける。

 「これが最後のプレゼント。」

中からはまた一枚のカード。


”結婚して”


つくしは小刻みに震える手でカードを取り出すと、カードの下にダイヤの指輪が輝いていた。


 「花沢類・・・。」

 「類、でしょ。」

 「あたし・・・。」

 「ん。」

 「ありがと・・・類。」

 「それ、もう聞き飽きたって言ったでしょ。」







ツリーに飾られた電飾が、つくしの指に光る指輪を七色に輝かせる。
虹色に輝く指輪を、つくしは類の腕の中でじっと見つめていた。

二人でなら虹も掴める。
温かな光の中で・・・。


メリークリスマス!



END





◆後書き・・

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ホワイトな夜 色々な夜-類架 2005年12月16日[16:54]
冷え込む夜。

12月に入った途端、街はクリスマス色に染まる。
素敵なクリスマスを期待して、大人になった今でも心は弾む。
なのに、深々と降り積もる雪の日は、とても静かで誰もが無口に通り過ぎる。
こんなに沢山の人が居るのに、たったひとりの様な気がして余計に寒さが身に沁みる。

だけど。


二人なら。






手をつなぎ夜の散歩。
白いマフラーに白い帽子。
 「花沢類は何色でも似合うよね。」
ふいにつくしが言うと、類はにっこりと微笑を返す。
 「牧野は白が似合うね。」
寒さに瞳が潤み、薄く色づいた頬と唇が可愛くて、愛しい。
類は抱き締めたくなる衝動に駆られた。

 「ねぇ?牧野。」
類は立ち止まり、一歩先を行くつくしが「ん?」と小首を傾げ振り返る。

 「今年のクリスマスは、何が欲しい?」
つくしは苦笑いしながらこう答えた。
 「何にも。だって、何でもない日にあたしの欲しいもの買ってくれちゃうし。
 もう欲しいものなんて何にもないよ!この間だって、この帽子とマフラーくれたし、その前だって・・・。」

だって、呆れた顔しながらも牧野、喜んでくれるから・・・。
それに・・・会える口実にもなるし?
なんて言わない。

 「だって、牧野がいつも物欲しそうに見てるから。ぷっ。」
 「そ、そんな事ないよ!これでもちゃんと働いてるもん。そりゃ、何でもすぐに買えるほど沢山は無いけど・・・。」
少しはにかみ俯いて、つくしはぶつぶつと独り言のように呟く。

 「牧野・・・ぷぷっ。ご、ごめん・・・さっきの冗談だから・・・くくくっ!」

 「なっ!もう!!そんな冗談やめてよね!ほんとにそんな顔してたのかと思って、すっごく恥ずかしかったんだから!!」
ほんと、牧野の顔は百面相で面白い。ぷっ。

 「それで?!花沢類は何が欲しいの?」
笑い続ける類に、つくしは頬を膨らませ言った。


出合って10年目のクリスマス・イヴ。
二人で過ごすクリスマス・イヴ。
沢山のイルミネーションを散りばめた街路樹たち。

一番欲しいものは・・・・・・。
白く煙る二つの息が交じり合う。

一番欲しいものは・・・・・・。
真っ白な雪が、類の言葉を吸い取っていった。



次回へ続く!




◆後書き・・


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