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足りない・・・2 物足りない夜-類架 2006年10月14日[01:04]
寝過ぎて体のあちこちが痛い。

ナースコールで体勢を変えて貰う。
つい、癖で看護師を口説いちまいそうになった。

が、一瞬牧野つくしの顔がよぎって笑えた。
顔を真っ赤にして怒ってる牧野つくしだったから。

体勢を変えて貰ったついでに、カーテンを開けて貰う。
まだ夜中だ。
半端な時間に寝たからだろうな、と総二郎は思い外の景色を眺めた。
何もない。

 「また何かあればすぐ伺います。」
そう言って彼女は少し顔を赤らめて微笑んだ。

ただ、薄い雲が月明かりに照らされ輝いていて、三日月へと変わっていくふくらみのある月があるだけ。



 「何か今・・・。なんだ?何か忘れてるような・・・。」


大事なことのように思えたそれは、朝になる頃まで必死で考えたが
答えは見つからないままかき消されてしまった。









 「西門さん?」

昨夜皆と少しお酒を飲んだつくしは、この3日の寝不足がたたり気がつけば桜子の家に居た。
コーヒーを一杯飲み家へ帰ってシャワーを浴び、つくしは急いで病院へとやってきたのだ。
だが、総二郎は昼前だというのにまだ眠っていた。

つくしは総二郎の寝顔を穏やかな顔で見つめる。
3日間、同じ顔をずっと見つめていたが、今日ほど穏やかな心持ちで見つめたのは初めてだった。

 「本と綺麗な顔立ちだよね。肌もすべすべ。うらやましー。」

つくしは総二郎の頬を指の背でなでた。
胸が高鳴るのを感じながら。


総二郎が目覚めるまでの時間、つくしはじっと眺めていたいと思った。
それでも自然現象には敵わない。
トイレへと席を立とうというとき、総二郎がかすれた声を発した。

 「ん・・・ん?牧野?」
 「あ、起きた?検査どうだった?何か飲む?もう痛くない?」

総二郎はくっと笑ったかと思うと、眉間にしわを寄せ手を挙げつくしの言葉を制した。

 「おま・・・んなに一気に聞かれても・・・っつーか、まだ腹痛いから笑かせんなって。」
つくしは笑わせるようなことは何一つ言っていないとでもいうように、きょとんとして総二郎を見た。

 「そのマシンガントーク、何かちょっと懐かしいなって思ってな。」

あっとつくしは声を漏らすと、ごめんなさいと照れくさそうに笑った。


それから、昨日みんなで飲んだときの話しを話した。
一人での時間は長く感じるが、つくしとの時間はあっという間に過ぎもう夕暮れ時になろうとしていた。

そんな夕焼け空を見て、総二郎はまた昨夜の思い出せない何かをまた思い出した。



 「な、俺あの日お前に何か言おうとしてなかったか?」

 「へ?」

 「いや、なーんか気になるんだよな。事件の前後が曖昧っつーか。
一時的なもんだって言われたから特に気にしなくてもいーかとは思うんだけど、なーんか気になって。」

つくしは事件の前を思い出そうと目を凝らした。


 「んー、別に特に変わったことはなかったと・・・あ、何か話しがあるって言ってた。それかな?」

話し?俺が牧野に・・・。うーん、何考えてたんだ俺。

 「そう、あの日電話かけてきたのは覚えてる?お昼位だった、今夜話しがあるって。」

記憶をたどっていくけどわからない。

全く解決しないまま、牧野はまた家へと帰っていった。
昨日と同じ言葉を残して。



サイドボードの引き出しに入っている俺の私物。
何かヒントになる者は無いかと探ってみた。

 「スケジュール帳・・・。」

良い物発見、と頬を緩め、手帳をぱらぱらとめくっていく。
かすかに香水の香りがした。
普段付けている香水。
たしか、牧野が好きな香りだと言って以来、ずっと同じ香水を愛用してたんだっけか。

事件3日前。
この日は覚えてる。
牧野からメールがあって、けどパーティ出席予定だったから断ったんだ。

あれ?
その日の埋め合わせに事件の前の日に会う予定だったよな。

いつもなら時間と場所が書いてあるはずのその欄。


 「これって・・・三日月か?はぁ?なんだこれ。」







熱気も消えいき、冷ややかな病室に一人。
俺はまた眠れない夜を過ごす。


牧野の香りにくすぐられ、今夜の月を遠くに眺めながら月を思った。




◆後書き・・

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目が覚めると、病院のベットの上だった。

























 「西門さん、気がついた?ココ、病院。3日も眠ったままだったんだよ?解かる?」



瞳を潤ませながら、覗き込んでくる女は「牧野つくし」だった。



どうして病院に居るのか、蜘蛛の糸のように細い糸を手繰り寄せる。

けど、解からない。





 「もう!このまま目が覚めないんじゃないかって思っちゃったじゃない!」

つくしは総二郎の手を力いっぱい握って抗議する、その手は小刻みに震えていた。

 「俺、なんで・・・?」

少しかすれた声。小さく咳払いをした途端、総二郎はわき腹に走る痛みに顔をゆがめた。



 「大丈夫?!痛む?手術は成功したらしいけど、まだもうしばらくは安静にしてなくちゃダメだよ。」



 「手術?一体俺は・・・・・・?



総二郎の言葉に、つくしは顔が青ざめていくのがわかった。

 「西門さん・・・まさか・・・・・・あ、あたし、が・・・誰か解かる・・・?」



 「誰って、牧野つくしだろ?俺は西門総二郎。あのな、この状況でその顔やめろよ?ちゃんと覚えてるっつーの。」



多分牧野はつかさが記憶喪失になったときの事を思い出したんだろう。

安心したのか牧野は小さく息をついた。

まだ頭がボーっとする。



 「で?俺なんで病院に居るんだっけ?」

 「え?だって覚えてるんじゃないの?」

 「あー・・・いや、何か起きたばっかで、頭がボーっとしてて。」



 「西門さん、刺されたんだよ。あたしと会って、飲みにでも行くかって歩き出した時に女の人がナイフで・・・。」

女の人、すごい綺麗な人だったと思う。

西門さんを刺したナイフ持ってその人「総二郎総二郎」って泣いてた。

あたし、すぐ救急車呼んで・・・でも意識がなくって。やっと目が覚めたんだよ?



 「そっか。悪かったな、迷惑かけて。」



ううん、とつくしは頭を振った。

そして、一瞬顔を赤らめたかと思うと、握っていた手を解き皆に知らせてくると足早に部屋を出て行った。









それから間もなくして、司達がやってきた。

労わるどころか、桜子やあきらは「だから言ったのに。」と毒づかれ、

類は「総二郎なんてやめちゃって俺にしとけばよかったのに。」と牧野に言ったり・・・。

俺が動けないのを良いことに、好き勝手言ってやがる。

実際、過去の女が原因でこうなったから、何も文句はいえねぇけど。



 「でも、ほんと良かったですね。一時期はどうなる事かと心配しましたよ。」

 「そうそう。つくしなんてすっごい心配して、類くんが居なかったら壊れちゃうんじゃないかって思ったもんね~?」

類が居なかったら?

 「もう!!滋さん、やめてよ!!恥ずかしいから。」

つくしは真っ赤に頬を染めて、手をばたつかせて滋の側へ走り寄った。

 「えーだって~、ほんとのことだもん、ね~?類くん。」

小首をかしげて、小悪魔のほうに微笑む滋・・・に見えたのは俺だけか?

 「別に。」

コイツ・・・しれっとした顔しやがって・・・。



 「あ、そうだ。つくしの着替え持ってきたよー。」

 「わ、ありがとう。すごい助かります。もう持ち合わせの分なくって困ってたから。」

 「おいおい、まだ付き添いすんのかよ。もう総二郎も意識戻ったんだから、牧野も今日から家に帰れよ。」

みんなが頷き賛同する。

 「でも、ほら。ココってお風呂も着いてるし。」



確かに、ココには風呂もベットもある。普通のワンルームと変わらない設備が整っている。

が、動けないとはいえ一応俺も男だぜ?

そんな俺の頭の中を読んだのか、急に納得したようにさっきの言葉を訂正した。

 「じゃあ、今日は帰ろうかな。もう心配ないだろうし。」



確かに・・・でも何かムカつくぜ?その切り替わりよう。



 「あ、じゃあこのまま一緒に飲みに行こうよ!せっかく皆揃ってるんだしっ!」

滋の提案に俺だけが食いつく。

 「俺は揃ってねーけどな。」

 「自業自得でしょ。」

類の冷たい突っ込みに、皆が笑った。

 「ってことは、類も久々に来るってことだな。」



全員一致で飲みに行く事が決まった。・・・らしい。

 「またお見舞いに着てあげるからね~。」

 「お大事に。」

 「早く治せよ。」

と口々に声をかけ滋が先頭を切って部屋を後にした。



最後に一呼吸置いて、つくしが言う。

 「また明日来るから。安静にしててくださいね。」

 「マジでサンキューな。」



静かに閉められたドアの向こうで足音が遠ざかっていく。















まるで嵐のような奴ら。

誰も居ない部屋に一人天井を仰ぐ俺は、流石に体がだるい。

寝起きに10キロマラソンを走らされた気分だ。



総二郎は細く長い息をつくと、目を閉じまた長い眠りについた。

















◆後書き・・


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